2022年3月18日東京富士語学院は35名の卒業生を送り出します。

そのなかで卒業生はスピーチを行います。タイトルは『日本に留学して成長したこと』。まず、卒業クラス」Sクラスと2-1クラスでクラス内選抜をして5人ずつ、10人を選びます。

 2022年2月22日(火曜日)、2が並んだこの日に作文を書くための導入授業をしました。導入授業では作文を書く目標を伝えました。

💛目標:日本に留学して成長したことを内省し、3つの観点から伝わるように対話的に、日本語で表現すること。これは、この1年あるいは1年半ずっと対話的な表現活動を行ってきた学びの結実であり、これからみなさんが前を向いて歩いて行くための、大切な作業となります。

💛そして私自身もこれをいい機会として、自分を内省し、ことばにし、伝えました。

『コロナ禍で共に学んだ学生のみなさんへ』

2022年3月18日(これは卒業式の日です)           担任 倉八順子

 きょう卒業式を迎えるみなさんは、コロナ禍で1年延長して学んだ学生とコロナ禍で日本に来てくれた学生、30名です。こんなパンデミックの中で、自律性を身に付け、自分の目標を実現して、進学を決め、卒業に至りました。卒業、本当に、おめでとうございます。

 私は人をやる気にさせるのは「自分の達成」だと考えていました。でもコロナの状況が与えられ、人をやる気にさせるのは自分の達成ではないのではないかと考えるようになりました。それは自分を誠実に表現することではないかと。

コロナ禍で何冊かの本に出会いました。その中にカミュの『ペスト』があります。医師リウーは言います。

 「人類の救済なんて、大げさすぎる言葉ですよ。僕には。僕はそんな大それたことは考えていません。人間の健康ということが、僕の関心の対象なんです。まず第一に健康です」(カミュ『ペスト』新潮文庫p.323)。リウーは、人の今を願い、人の今、「居ること(being)」こそが大切ではないかと言います。そう、『居続けること』こそが人間の根源的欲求なのでしょう。

 私はそれまでのdoing達成目標に基づいた教育実践から、人間の3つの根源的欲求を満たす教育実践、beingの教育実践をしようと考えました。

 一つは『自律性の欲求』を満たすこと。自分の中にある自分の考えを表現できる環境の創出です。自分の本当に考えていることを表現することばを創出することで、その人のアイデンティを認めることになります。

 第2は、『コンピテンスの欲求』を満たすこと。自分が価値ある存在であると感じられる環境を創出すること。それは学生の日本語能力を絶対基準で比較するのではなく、学生一人一人をそのまま認めることです。

 そして、第3は、人間のもつ『関係性の欲求』をみたすためのクラスづくり。クラスの仲間に向けて自分の本物の情報を発信し、クラスの仲間とつながることで、学生の『関係性の欲求』は満たされていきます。

人はひとりひとりが、今・ここにいる価値を感じることで、自己決定している感覚、環境にエンゲージ(関わっている)しているという感覚を得、コミュニケーション力をつけていきます。

 みなさんとのこの1年半の取り組みは、『対話的な授業』を作ることを通して、みなさんに『アクティブ・ラーニング』の姿勢を育む取り組みでした。みなさんのコミュニケーション力がついていったことを誇りに思います。

 卒業していくみなさん、本当に、ありがとうございます。これからも自己表現、対話を続けていきましょう。

楽しそうに書く学生たち
梅もほころび始めました!春ですね