日本語教育で漢字指導は、非漢字圏の学習者にとっても、漢字圏の学習者にとっても、とても大切です。初期の段階で、漢字のおもしろさを、外的調整、取り入れ的調整で、こころに取り入れることができれば、漢字学習に内発的に動機づけられていき、自律学習へと成熟させていくことができます。「漢字は大変だ」ではなく、「漢字は大切だ」「漢字はおもしろい」「漢字で語彙が増えていく」という認知がうまれるよう、教師は、漢字の意義、漢字の深みを伝えていくことが肝要です。

初級ではBICS(生活言語能力)にかかわる漢字300を学習します。この段階で、自己開示する作文を漢字を適切に使って書き、発表します(第47回の日本語教室の小径参照)。

テーマは1.自己紹介、2.私の一日、3.私の好きなこと、4.私の故郷、5.家族と仕事、6.私の目標、7.私の好きな季節などです。400字の作文で適切に漢字を使って書く。そうしているうちに、漢字が読め、書けるようになっていきます。

中級では漢字700、CALP(学習言語能力)に関わる漢字へと広がっていきます。日本についての知識、世界についての知識、など、知的好奇心を広げていくという学習の成否に核となる役割を、漢字は担っています。この段階では、漢字が表象する意味世界を類推できるように指導していくことが大切です。

そして中上級では漢字1000。私は、学生たちが自分の意味世界を表現する「漢字」を選んで、自己内対話で自己表現を行っていけるようにと願って、学生とともに漢字の世界を共に楽しんでいます。学生から教えられることが本当に多いです。「そうだっけ!それもこの漢字だっけ!!」

10月26日は「事件に関する漢字」(『留学生のための漢字上級1000』国書刊行会)でした。学生たちの自己内対話の自己表現場面をご覧ください。

漢字の対話的学習