『みなさんの多文化共生に向けて今後の目標』と対話して      2023年1月6日  倉八順子

23名の履修学生のうち、manabaにレポートを提出した18名の学生のレポートを読みました。

ここではその中から、自分の言葉で多文化共生に向けての具体的な目標を表現した15名の学生の文章を引きます。

この15人の学生たちは、「対話とは人と向き合うときの基本姿勢であること」そして、「対話が人を豊かにすることに」に気づいていきました。

わたくしはかつて、30年前、ロシアの思想家・哲学者であるミハエル・バフチンの著作『ことば・対話・テキスト』を読み、「対話は人を豊饒化させる」ことに気づいていったこと、その後、対話の大切さを伝えたいと研究・実践を重ねてきたことを思い、みなさんに対話の大切さが伝わったことを本当にうれしく思いました。みなさんの真摯な努力に敬意を表します。これから対話によって、自分の人生を切り開いていったくれることを念じて、みなさんのことばを引きます。

 

💛月曜日グループ:小中高の行事

🌹楠井希彩さん

「授業で先生から聞いた学生の生い立ちの話など、自分では想像ができないような過去や背景を持った人が身近に多くいることを痛感し、自分の視野の狭さを思い知りました。多文化共生にはまず相手を知ることが重要であるので自分は異文化を知る必要があると改めて感じます。そのためには自分から異文化と交流できる場所に積極的に赴きたいと思います。異文化を深く知り、異文化同士で対立した際にどのように対処すべきか、ということについて学ぶ直し、自分が異文化を受容するだけでなく、文化間の壁を取り除き、多文化共生社会へ導くために異文化や外国人への配慮を心がけようと思いました。多角的な視点から物事を見るように意識することで常識にとらわれない考えを持ち、他者への尊重を忘れずにいたいと思います。」

🌹渡邊爽帆さん

「まだ私には経験が足りないと考えます。ALTの先生を除き、初めてこの日本語教育課程を通して海外の人と交流をしました。何回か対話実習を通し会話をしてきましたが、自分には経験が足りないと感じました。なぜなら、初回と今回の対話とでは、自分の中で話の広げ方が変わったからです。日本語だけでなく、他の言語での経験も少ないです。多文化共生に向けての今後の目標は「経験を積む」と「日本について知識をつける」です。外の世界と関わりをもつことで、自分の視野もそして考え方も広がり、友人を増やすことができます。自国についての知識があれば、共通の趣味をもつ人と話しやすく、興味をもってもらえる機会つくることができます。この2つの目標を達成できるように活動していきたいです。」

🌹征矢深佑

「これからも多くの方と関わりをもち視野を広げ知識をつけていきたいと考えています。思い込みや先入観をもたずお互いの違いや文化を認め合い、まずは仲良くなることが必要です。日本人同士が仲良くなるのと同じことをしたら、多文化共生に近づくと考えます。笑顔で自己開示しながら話すなど、そのような行動一つ一つがいかに難しいか、いかに大切かを、日本語教師を目指してきて感じました。これらが海外の方にも日常的にできれば、多文化共生はできると思います。日本人一人ひとりが今の日本の現状を理解するなど多くの方が日本や世界の知識をつけることで、一歩ずつですが多文化共生に近づくと思います。私は人と話すことが好きなので、海外の方と日本人が仲良くなるための橋になれたらいいなと思っています。自分の長所を生かして多文化共生社会を作るためにはどうしたらいいのか、日々考えていこうと思います。」

🌹高橋まりんさん

「歴史や背景が書かれた書籍や論文などを用いて、多文化に対する知識をつけることも大切ですが、今回の教壇実習と対話実習を通して、対話することの大切さを強く感じました。人は誰でも、実際に話してみないと、偏見でその人を決めつけてしまうと思います。ですが、対話をすることでその人間性がわかり、その人に対する考え方が変わると考えます。私も富士語学院の留学生と最初に会ったときは、少しこわくて近寄りがたいイメージがありましたが、今はその印象から大きく変わり、優しくて、心の温かい人たちだと気付くことができました。多文化共生に向けて、他文化の知識をつけるとともに、自分とは違った文化を持つ人々とたくさん交流して、それぞれの文化の良さを知っていきたいです。」

🌹鈴木友香さん

「今回の教育実習を通して一番学んだことは、自分が積極的に相手の話を聞いたり伝えよう教えようという熱意があれば、言葉が違ったり、理解することが難しい場面でも対話を行うことができるのではないかということです。多文化共生のためにはお互いにこころを打ち解けて受け入れることが重要だと思います。また、伝えるためには難しい言葉を使うのではなく、やさしい日本語を使って、意志を伝えていくことによって共生できる社会に近づくのではないかと思います。私は共生を行うために国の文化や伝統について学び、知っておくことが、意志疎通や対話を行うために必要不可欠ではないかと感じたので、他国の文化や伝統を学びたいと思います。」

 

💛火曜日グループ:オノマトペ

🌹鳥飼理乃さん

「対話実習にて、生活に不便はないけれど、日本の友だちを作りにくいという話を聞きました。まtら、言語交換のイベントに参加しても年齢に隔たりがあったりするとのことでした。そのため、交流イベントに注目して考えると、国籍や文化のちがいを知り、地域の一員として共に認め合い、互いに力を合わせながら発展していこうという考え方をもてる人を、まずは地域の人に広める必要を感じます。現在は興味がある人にしか伝わっていないのかと思い、立場や年齢に偏りなく伝わる方法を考えていきたいと思います。また、日本に来てすぐの人へのサポートとして、文字はインターネットで調べられるけど、店員との会話や通話は難しいという問題を解決するサポートにも取り組めるよう解決策を考えていきたいと思います。」

🌹小泉真夕さん

「私は教壇実習と対話実習を終えて、多文化共生には相手を知って受け入れることが大切だと思いました。文化や考え方、使用する言語に違いがあって上手くコミュニケーションが取れなくても、気持ちは相手に通じるし、相手の気持ちを感じ取ることはできるということを改めて感じました。間違いを真っ向から否定して自分の意見を押し付けることは、対話にも発展することなく多文化共生も難しくなってしまいます。違いを違いだと認識すること、自国の文化や考え方を伝えること、相手の文化や考え方を知ること、どれも大切であると思いますが、違いを否定したり、自分の文化を押し付けたり、相手の文化に染まり過ぎたりすることは、多文化共生には当てはまらないと考えます。なので、私は多文化共生に向けての今後の目標として「相手を知りたいという気持ちを胸に、違いも受け入れていくこと」を掲げたいと思います。」

🌹志田弓佳

「私にはより多くの経験とそれによる刺激が必要だと考えます。その経験は、何でも構いませんが、必ず必要なものとして挙げられるのは「対話」です。対話があってこそ、経験が形になり、自分だけのとっておきの「ホンモノの経験」となります。日常での対話や、教育実習の一環である対話実習の際、私たち日本人は、本当に言いたいことや聞きたいことを自分の中に閉じ込めてしまう傾向があります。それはきっと私たちのアイデンティティの一つであり、協調性というすばらしいポイントです。しかし、それだけでは多文化共生と言えないのではないでしょうか。私たちは少し図々しいくらいでちょうどよいのかもしれません(もちろん良識ある範囲で)。日本語という異文化を教える日本語教師として、世界に出る人として、まずは、ありのままの自分を表現すること。これを一つの指針として意識し、多文化共生の人になりたいです。」

🌹岡楓華

「多文化共生の実現には、すべての人が対等に扱われることが求められています。すべての人が対等な扱いを受けるには、コミュニケーションを通して互いにわかり合うことが一番大切であると感じます。私は、日本語教員資格過程の授業で培った知識やスキルを活かして、多文化共生をコミュニケ―ション支援の視点からサポートしていきたいです。アルバイトの接客など外国人と話す際には、相手の文化を認め尊重する気持ちを忘れず、やさしい日本語を使うように意識したり、困っている外国人がいたら声を掛けたり、少しでも外国人の力になれるよう、多文化共生に向けて生活していくことを心がけていこうと思います。」

🌹伊藤礼花さん

「多文化共生に向けた目標は、対話的な姿勢を意識して実行することです。この2年間の授業や対話実習、教壇実習を通して「対話的」とは何かについて考える機会が多くありました。日本語教員養成課程を取った最初の頃は「会話」と「対話」の区別も分からず、同じ意味だと思っていました。しかし、1年目の授業内で行った本や映画の紹介、2冊の先生の本を読んで、「対話」は相手に対する向き合い方を刺しているということに気づきました。相手と話す以前に、相手に対する向き合い方、尊重した姿勢などを指す言葉であり、多文化共生には対話的な姿勢はとても重要です。お互いに相手を尊重する姿勢が多文化共生を実現させると思います。そのため、多文化共生に向けて自分から対話的な姿勢を取り、自己開示して、今後である様々な人たちや社会に出てからの人間関係に役立てたいと思います。」

 

💛水曜日グループ:百人一首

🌹山崎朱莉さん

「多文化共生について考えて2年が経ちました。最初は「対話」からスタートし、異文化を知ることや相手を受け入れる気持ちの大切さを実感しました。そして今回、教壇実習を通して多文化に向けての新たな目標が立ちました。それは「自分の国の文化に興味をもつこと」です。私は、異なる文化が共生していくには、異文化に対して興味を持ち、それを受け入れる気持ちが一番大切だと思っていました。しかし、当たり前ですが多文化共生の「多文化」には自分の国の文化も含まれており、自分の国の文化に興味関心を持つことが多文化共生の第一歩になるのではないかと考えています。他国の文化や日本の文化に対して無関心のまま過ごさずに、興味関心を持ちながら生活しようと思います。そして、日常に存在する文化的違いに気づき、認めて受け入れる気持ちを育んでいきたいです。」

🌹大木美玲さん

「今後の目標としては、やはり国や外見などで偏見を持つことは決してせず、これからさまざまな母語の違う人たちともっと対話がしてみたいと思いました。そう思うようになったのは、この日本語教育実習での経験があってこそだと感じます。ネットやニュースではさまざまな異文化間の問題も取り上げられ、今でこそ共生の難しさを感じることも多く思います。しかし今回のように“国”というより“その人自身”として意識したことで、最初は少し怖いと思っていた富士語学院の人たちは気遣いにあふれ、メリハリのある人たちであったと今は意識しています。多文化共生に向けてできることは、これからもい文化的情報を正しく取捨選択し、偏見の目をもたず対話する相手文化をより尊重することだと改めて感じました。」

🌹松本みのりさん

「以前学習した多文化共生に必要なこととは、私たちが寛容性を身につけ、多文化共生のために必要な知識を知ることでした。知識をもたないがゆえに偏見をもち、判断力を失います。知識と言っても机の上に座って文字とにらめkkとしているだけではダメだと、対話が必要だと何度も教えていただきました。対話は難しいです。一方通行では対話にならないからです。今回模擬授業を行って、その難しさを知りました。相手を知ろう、知りたいという姿勢が中心ではなく、前提にあってこその多文化共生だと思います。今後においても学びを絶やさず、対話を成熟していこうと考えます。」

 

💛木曜日グループ:民謡

🌹横山珠己さん

「私のファ―ストキャリアとして日本語教員として働くことはしませんが、将来自分が教師として働くこともあるかもしれません。この経験は留学生や技能実習生に限らず、同じ日本人同士でも多文化共生は当てはまると感じました。ネットで知り合った友だちと実際に会った時、ネットとの印象と実際に会った後との印象の違い、意見の食い違いをしていることが多くありました。その人はその人の経験から判断してその発言をしているため、こういった違いは多文化共生に当てはまると思いました。この経験があるから、自分と違う文化を持つ人に対してマイナスな印象から入ることなく、フラットに接することができると思います。多文化共生に向けて、相手のことを理解する、自分とは違うことを理解するというのは、結構難しく、出来る人は少ないですが、多文化共生を学んだ私が積極的に自分のコミュニティで頑張っていきたいと思います。」

🌹中田彩乃さん

「母語が異なっていても、相手を知ろうという思いと行動が大切だと思いました。現在、社会情勢がどうなっているや多文化について知るということも、相手を知るうえで大切だと思います。そのうえで、相手を個人として対話的に接することが多文化共生の対話的な交流につながるのではないかと考えます。私は、まず他者から見た多文化である自国のことや多文化について学ぶことから始めていきたいと思います。そして私自身が自己開示と相手を知ろうと考え、相手との対話をして、少しずつでもかかわっていくことを目標にしていきたいと思いました。また、この授業を通して学んだ対話の大切さや日本語教師としての学びを活かせるようにしたいです。」

🌹臼井優衣奈さん

「多文化共生に向けた今後の目標は、柔軟な思考力を磨くことです。約2年間日本語教員養成課程では、留学生について多文化理解についてなど様々なことを学びました。特に、対話実習・教壇実習などでは、それまで教科書の中にしかいなかった留学生を目の前で見て対話することができました。日本には海外から来たこれほどにも積極的で寛容で優秀な学生がいるのだと知り、視野が一気にひろがりました。一方で、留学生をはじめとした在留外国人への日本語教育が十分でない状況や偏見に苦しめられる外国人が多くいる現状を再認識しました。私一人ができることは限られているかもしれませんが、そのような問題に柔軟な思考力で向き合い、自分に何かできることがあれば留学生のように積極的に行動したいと考えています。」

 

どの学生も自分で「多文化共生」を表現していて心打たれます。

 

「積極的で寛容で優秀な学生がいるのだとしり、視野が一気にひろがった」と表現した学生、その気づきの架け橋になれたことを幸せに思います。多文化共生をあじわって生き、伝えていきたいと思います。