2001年2月にcouncil of Europeが設定したCEFR(common European Framework of Reference)では、言語学習者を6段階A1~C2の6段階にわけ、その段階でできることを能力記述文の形であらわしている。A1~C2の6段階 能力記述文
A:基礎的な言語使用者(Basic User):A1,A2初級
B:自立した言語使用者(Independent user):B1,B2中級
C:熟達した言語使用者(Proficient User):C1,C2 上級
2018年2月に改訂されたCEFR companion volume with new descriptor では、A段階を4段階、B段階を4段階、C段階を3段階の全11段階にわけ、能力記述文を表した(Pre-A1, A1, A2, A2+, B1, B1+, B2, B2+, C1, C2, Above C2 の11段階)。
日本語学校では基礎的な言語使用者A2段階(N4)で入学した学生たちを、自立した言語使用者B2段階に高める教育が求められる。
CEFR 例示的能力記述文 聴衆の前での講演(Addressing Audience)を見てみると、
A2段階は:
A2+:身近な話題について、短い、練習済みの基本的なプレゼンテーションができる。質問を繰り返しいってもらい、回答するのに何らかの助け舟を出してくれる人がいるなら、話し終えた後から出される簡単な質問に答えることができる。
A2 :自分の毎日の生活に直接関連のある話題について、短い、練習済みのプレゼンテーションができる。
意見、計画、行動に対して、理由を挙げて、短く述べることができる。
話し終えた後、限られた数の簡単な質問に答えることができる。
B2段階は:
B2+:事前に用意されたプレゼンテーションをはっきり行うことができる。ある視点に賛成、反対の理由をあげて、いくつかの選択肢の利点と不利な点を示すことができる。
一連の質問に、ある程度流暢に、自然に対応ができり。話を聞く、あるいは話をする際に、聴衆にも自分にも余分な負荷をかけることはない。
B2:はっきりとした、体系的に展開したプレゼンテーションができる。重要な要点や、関連する補足となる詳細に対して、焦点をあてることができる。
あらかじめ用意されたテクストから自然に離れて、聴衆によって喚起された興味ある点に対応できる。そこで非常に流暢に、楽に表現ができる。
となっている。
私は、B2+段階の日本語力をつけるに、授業形態として「ディベート」が有効であることを実践知として感じ取って来ました。この「日本語教室の小径」でも報告を行って来ました。
昨年度はN1取得者およびN2取得者がいるクラスで行いましたが、今年度は17名中、N2取得者が4名のクラスでの実践を試みました。
目標:立論者:論理的に述べる
反論者:相手の発言を聞いて、反論を述べる
結論者:他者への敬意・寛容性をもって結論を述べる
実践報告
タイトル:『年をとっても都市に住む方がいいか』『年をとったら地方に住むほうがいいか』
2024年2月27日(火)2-4クラス 実施
2月13日(火) ディベート導入
2月20日(火) ディベート練習
2月27日(火) ディベート本番
私が論点整理を行いました。
🌹『年をとっても、都市にすむほうがいい』派
1.交通の利便性
2.買い物の利便性
3.文化施設がある
4.今まで築いてきた人間関係がある
5.住み慣れた土地である
🌹『年をとったら、地方に住むほうがいい』派
1.のんびり生活できる
2.自然が豊か
3.物価がやすい
4.自分の趣味を楽しめる
5.自治体の支援がある
ディベートの方法、ディベートの表現、司会の表現を整理して、学生に与え、
ディベートメンバー 司会・程祥元 タイマー張敏琳
『年をとっても、都市に住むほうがいい』 | 『年をとったら、地方に住むほうがいい』 | |
メンバー
|
立論 劉思杰
立論 王雪 反論 張月明 反論 劉馳 結論 段璐杰 |
立論 黄海林
立論 姜斌 立論 王夢橋 反論 ディリレバ 結論 デギ |
点数と結果
『年をとっても、都市に住むほうがいい』 | 『年をとったら、地方に住むほうがいい』 | |
立論 | 1人30×2=60点/43点 | 1人30×2=60点/47点 |
反論 | 1人40×2=80点/48点 | 1人40×2=80点/53点 |
結論 | 70点/63点 | 70点/52点 |
計 | 210点/154点 | 210点/152点 |
立論が終わった時点、反論が終わった時点でそれぞれ、コメント・アドバイスを与えました。反論が終わった時点で、「年に住むほうがいい派が91点、「地方に住むほうがいい派」が100点と、「地方に住むほうがいい派」が9点リードしていました。
「年に住むほうがいい派」の結論者は、4分の時間をいっぱいに使って、落ち着いて結論を述べました。準備も十分にしていて、すばらしい結論になりました。
一方、「地方に住むほうがいい派」の結論者は、準備が不足で、生活日本語を使って、どうにか結論を終えました。
結果は、逆転で「年に住むほうがいい派の勝利になりました。
勝利はともかく、学生たちは、ディベートの楽しさと、ディベートが自立した言語使用者になるうえでの有効性を、身体で体感した授業になりました。
N2試験には合格できなかった学生たちも、充分なB2能力があり、「はっきりとした、体系的なプレゼンテーションができ」たことが、証明されたことは、本当にうれしいことでした。
クリックしてディベートの様子と学生たちの感想をお聴きください。
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