2004年からこのコースにかかわって20年目、今年がいよいよ最後の年になりました。来年は定年です。このコースに出逢って、このコースに育てられてきました。

1年目の『日本語教授法』には13人の学生が集まってくれました。『今年から、日本語教員は国家資格になります。登録日本語教員制度が始まる今年が『日本語教授法」の最後の授業になります。私は来年で定年になります。2年目はわたくしはみなさんと学べないけれど、実習は東京富士語学院で続けていきます。ここの集まってくれた13人のみなさんと、日本語教育の楽しさ、大切さを学んでいきます。』

13人の学生たちは、熱心に耳をかたむけ、相槌をうったり、笑顔で反応を返したり、姿勢反響の様子が伝わってきました。

例年のように、自己紹介ではじまるところは同じですが、今年は<学びの深さ>のICAPモデルを意識して、より深い学びがおこるように授業を設計しています。

ICAPモデルでは、passive→active→constructive→interacitiveとすすむにつれて、学びが深まってくるとされます。必ずしも、interactiveまでは必要ないにしても、constructive、すなわち、新しい情報が既存の知識と関連づけられていなければ、学んだとは言えません。それはすぐ忘れてしまう<情報>でしかないのです。自分の問題意識と関連づけて、言葉にする、文章に書く。それには情報を与えすぎないことも大切です。刺激的な情報を与え続けることで興味を持続させようとすると、思考停止になってしまいます。深い学びは起こりません。

 

interactive 双方向的 対話によって複数の人と新しい知識を構築する
constructive 構成的 新しい情報と既存の知識が関連づけられる。人に説明できる
active 能動的 メモをとったり、付箋をつける
passive 受動的 聞いているだけ

表1 ICAPモデル、(アメリカのアリゾナ州立大学のミキ・チー教授)

為末大・今井むつみ(2023)『ことば身体学び』扶桑社新書 p.210

 

1年目の日本語教授法の授業3回が終わりました。「学びの契機としての対話と他者へのリスペクト」ということで、対話を体験し、対話について考えました。

manabaのアンケート機能で次の問いかけをしました。「3回の授業が終わりました。『聴く力が話す力を育てる』を実感しているのではないでしょうか。この3回の授業に対話的に参加して『対話』についてどう感じましたか。きょうのグループディスカッションをとおして、『対話』についてこの3回でひとりひとりが感じたことを<自分のことば>で、3つのポイントで書いてください。」

 

ここでは5名の学生の回答を引きます。

💛S.Kさん

3回の授業を通じて『対話』についてわたしが感じたことは、初めに、対話は双方向のコミュニケーションであり、話す側の、自身の考えや想いを伝える姿勢と、聴く側の相手を理解しようとする姿勢が大切であるということがわかりました。話す側は、相手にわかりやすく伝えるために、声のトーンや表情、内容の簡潔さなどを考える必要があります。同時に、自分の本心や率直な意見を言葉にして表現する難しさもあると感じました。聴く側は、ただ「聞く」だけの受け身の姿勢ではなく、相手の話に興味をもち、そこから共通点や相違点を見つけることで、さらなる深い対話が生まれると感じました。

次に話す側と聴く側がお互いの意見を明確に伝えるにあたって、言葉の選び方や表現の工夫も重要だと感じました。まずは、相手の意見を尊重することが最も大切なことだと思うので、この授業で、自己紹介の後に感想を述べる際、初めに言う「よくわかりました。ありがとうございます。」という言葉は、対話を通じて良好な関係を築く上で、非常に効果的な言葉だと感じました。

最後に普段の会話では、話すこともなければ聞くこともないことを、テーマに沿って対話をすることで、単なる会話以上の学びや気づき、異なる視点での理解や新たな意見ができると感じました。

 

💛A.M.さん

『対話』について感じたことの一つ目は、お互いに相手を受け入れようとする姿勢が大切だということです。聴き手はもちろんのこと、自分も相手の反応・意見・感想を受け入れる姿勢をもつことで、よりよい『対話』ができると感じました。

二つ目は、集中力が必要だということです。『対話』は会話とは違い、目的が存在します。相手の話は反応を見逃さず、自分の思考を止めないように話すことは難しいですが、その分多くの情報を得ることができました。

三つ目は、『対話』によって相手への印象が変わるということです。ただ会話をしているだけだと話し方に印象を左右されてしまいますが、『対話』では相手の考え方に触れることができます。その人の本質を少し知ることができるように思いました。

 

💛K.E.さん

・皆さんとの対話で自分1人では思いつかなかった表現や意見を取り入れることができました。対話は自分のことばを増やすことのできるチャンスなので、これからも積極的に取り組んでいきたいと思います。

・今日のディスカッションで新しく人と繋がることができました。対話によって人間関係が構築され、人と人との輪ができるのだと思いました。

・今日、自分が前に立って発表する立場でしたが、他の方が言っていた通り相槌やアクションがあると安心できるし、緊張も解れました。やはり対話には聴く力がとても大切だと感じました。

 

💛T.R.さん

今回の授業を通して、「対話」について考えたことの1つ目は、2人以上の会話であり、目的・目標に向かって、意見を述べ合うものだと思います。そこに加えて、2点目に、10人いれば10通り以上の考えが出てくるため、相手の立場や意見を積極的に理解することが対話において重要なポイントであるように感じました。互いの認識がすれ違って拗れそうな場合には、対話が有効だと考えます。3つ目に、自然と自分を客観視していた点です。他のグループのどこにも感情的な考えは書いていなかったし、私のグループの問3の考えのように、どこか他人事のように捉えて、考えて結論を出している部分が垣間見え、それがあったことで、グループ対話がスムーズにいったように感じました。

 

💛N.N.さん

3回目の授業を受けてみて、ほんとに楽しい授業を取ったな~と感じました。私自身誰かと楽しく話すことは大好きですが、まだまだ話したことのない方々と対話することに不安を感じていましたが、今日受けてみてその不安が無くなった気がします。

 

対話について感じたこと

・人それぞれ得意不得意で分かれること

・知識が増えること

・価値観の違い

この3点を学びました。

 

対話は自分の意見を述べて、周りの意見と比較したりするから自分の意見が回りと違うのではないかとか正しくないのではないかとか不安になってしまうことが多いから、ただ話す(対話する)ということだけでも難しいのかなと感じました。

 

自分とは違う意見や知らなかったことを聞くことが多いから、自然と自分の中に新しい知識を取り入れることが出来ると思います。実際、3回目の授業で知らなかったことを知ることが出来ました!

 

最後の価値観の違いを感じることが出来るでは、人それぞれ意見や感じることは違うのでその違いに面白みを感じました。人間はみんな違ってみんないいんだなぁと改めて感じました。

 

 

🌹どの回答からも、『対話』について深い学びが起こっていることがわかります。1年間の成長がたのしみです。