2024年6月11日―13日、火曜日・水曜日・木曜日の3日間、16名の和洋女子大学日本語教員養成課程の実習生が5名、6名、5名にわかれて見学実習・教壇実習を行いました。

今年は本当に準備を丹念にしました。その過程を通して、実習生は、『対話とは何か』について自分で、深く、考えていきました。その過程に寄り添った私は、自分での考えることの意味について、深く、気づかされることになりました。みな、言葉は違っても深く学んだことが感じられる、振り返りレポートでした。そしてそのレポートに基づいて、「読む」のではなく、「対話的に語る」ことができるようになったのも、寄り添う一人の教育実践者として、うれしいことでした。ここでは、火曜日グループの2人のレポートを紹介します。

💛S.K.さん

1.授業見学の感想

授業見学で最も印象的だったことは否定をしないということです。遅刻をしてしまった生徒がいても「しょうがないよね」と否定せず、また生徒が学んだ単語を使って文章を作るときに普段の日本語では使わない表現をしても「それもあり」だと認めているところが本当に素敵だと思いました。クラスはアットホームな雰囲気でみなさん発言しやすい環境だと感じました。授業中に生徒から質問があり、一方的な授業ではなく対話的でした。また、意見を否定せずに認めることがこの雰囲気を作っているのかもしれないと考えました。さらに問題の答えが分からず困っていても、周りの人がヒントを出してあげていて協力的でした。母国語が通じない国に来て心寂しい人もいるかもしれませんが、この教室に来れば共に努力している仲間がいて安心できるのではないかと思います。だからこそ生徒は遅刻してでも、夜勤で疲れていてもこの空間が好きだから集まってくるのはないかと印象を受けました。和洋女子大学の授業で「日本語教室は日本語を教えるだけの場所ではない」と学びましたが、実際に自分の目で見ることで日本語語学学校が留学生にとってどれだけ大切なのか感じられました。今回の授業見学を通して日本語語学学校、日本語教師、対話についての理解を深めることが出来ました。

 

2.対話実習の準備について

対話実習の準備をするにあたって、興味を持ってもらえるように分かりやすく伝えたいと思い、パワーポイントを使いました。最初に作った教案はあまりにも難しい内容だったので、練習会の時に言葉が詰まってしまいました。さらに、質問がなくなってしまい、なるべく多くの質問を作成しそれに対する答えが必要だと思い準備しました。また、他の人の練習を見ていると図や写真を使われている人の発表が分かりやすく、楽しめたので参考にさせていただきました。また、質問もパワーポイントで表示することで考える時間ができるのではないかと思いました。実際には日本語のレベルが想像していたよりも高かったため必要なかったかもしれませんが、少しでも対話への助けになっていればいいなと思います。また、動画も取り入れてみました。日本に興味をもってきている生徒が多いと思うので日本の伝統的なことを取り入れるように工夫しました。具体的には、弓道や私の名前の琴からお琴を紹介しました。今回の対話実習ではどのようにしたら興味を持ってくれるのか考えながら準備しました。

 

3.対話実習の実施と感想

最初はかなり緊張しましたが、雰囲気が温かく安心しました。皆さんが興味をもって話を聞いてくれるので、自信をもって紹介、質問をすることが出来ました。初めて会ったにも私を受け入れてくれているようでとても嬉しかったです。また、実際に対話実習をして日本語教師がどれだけ大変なのか理解できました。間違いがあっても意味が通じていれば訂正する必要はないと理解していましたが、実際に対話していると自然に訂正してしまい後から気づきました。また、実習前に丸山さんのお話を聞き、授業の教案を考えるのに半日かかると知り驚きました。このことから日本語教師は細かいところまで気を配り、時間をかけてよいものにするやりがいのあるお仕事だと思いました。また、伝えよう、聞こうする姿勢が大切だと学びました。一度では伝わらなかったり、聞き取れなかったりすることがありました。その時に諦めるのではなく、何とか伝えて聞き取る努力をすることで対話することが出来たと思います。また、生徒同士でも中国語で助け合っていて複言語主義を実際に感じることが出来ました。今まで授業で対話とは何かを学んできましたが、対話実習で実際に体験をすることでより理解を深めることが出来ました。

 

4.今後の実習に向けての抱負

今回の実習では画像や動画など言葉以外のツールを使って対話をしました。その分、伝わりやすく楽しい実習にすることはできたのですが、今後は言葉をメインで実習をしたいと思います。言葉で伝えて、理解してもらい、質問をされ、答えるという対話を学生のうちにできるようになることを目標にこれから頑張っていこうと思います。また、臨機応変に対応する力も身に付けておきたいと思いました。今回の実習の準備で質問の回答に対する質問や意見まで考えました。普段の生活でもっとコミュニケーションを大切にし、次の実習ではもっと対話的になるようになりたいです。また、東京富士語学院の生徒はユーモアなアイディアを持っていました。今まで新しい考えを出すときに「普通」を求めてしまっていました。しかし、生徒を見て「私も自分らしい回答をもてるようになりたい」と思いました。なので、普段の生活から新しいアイディアを必要とする時にはみんなと同じものを探すのでなく自分らしい答えを探すようにしてみます。そして、次の実習で生徒と同じようにユーモアなセンスを持ち、自分らしい教案を立てて、実習に挑みたいと思います。次の実習は今回の実習よりももっと対話的になるように、授業に積極的に参加をして、さらに日本語教員や日本語学習者への知識を深めていこうと思います。

 

💛N.M.さん

  • 授業見学の感想

授業5分前の教室は、半分の学習者の方がまだ来ていない状態でした。学習者によって来る時間が様々で、授業に余裕をもってく方や、1時間過ぎた後にくる学生もいました。授業の始めに、先生が点呼をしている際、朝ごはんを食べている方やお話する方も見られました。日本の授業ではあまり見慣れていない状況なので驚きましたが、その環境がのびのびと日本語を学べているのかなとも感じました。授業が始まり、教科書の内容を先生が板書し、日本語の意味をクラス全員が参加しながら答えていたのはとても印象的でした。時々、中国語で会話することがありましたが、先生に話す際は日本語でしっかりと応答している姿をみてすごいなと思いました。比較的に、日本語レベルが高い授業だと思いました。日本では、先生にあてられてから発表することが多いですが、この授業では常に学習者が積極的に意見や質問をしていました。この授業の雰囲気を作るのは簡単なことではないと思います。日頃の先生と学習者の信頼関係があり、学習者同士も交流をしているのだなと気づきました。授業の展開で、新しい日本語表現を確認した後、発音練習にはいり一人ずつ音読する時間がありました。その後には、その表現を使った文をその場で作成する時間もあり、常にあてられる緊張感を持ちながら授業に集中することができると思いました。それぞれ個性があり、それを授業で生かせていて、素晴らしい環境だなと思いました。

 

  • 対話実習の準備について

対話実習の準備は主に3つしました。1つ目は、和洋女子大学の授業で先生役と生徒役に分かれ練習をしたことです。最初は、どう始めたらよいか分からず苦戦しました。そこで私が頑張ったとは、「対話」とは何かを1から考え直したことです。今まで授業で学んできた対話の仕方を振り返り、先生がいつも私たちにどう授業しているかを考えました。その時に、「対話」とは一方的に話さず相手の意見を混ぜ合わせながら、気持ちを乗せて会話することだと気づきました。そのため、対話実習の練習では、トピックは用意しましたが、相手の事を知るために会話の流れにまかせて以前より対話をすることができました。2つ目は、教案を作ったことです。教案を作るのは簡単ではなく、授業の転換を予測しながら流れを持っていくのが難しかったです。しかし、友達や先輩に相談し合いアドバイスをもらったことで、自分の実習の軸ができました。その軸とは、楽しい時間を作ることです。この軸から色々と広げていき、資料や対話の内容を決める事が出来ました。3つ目は、対話実習に使う資料作成です。構成は、【名前・出身地・年齢・好きなもの・気分・好きな場所】です。工夫したことは、すべての漢字にひらがなを振り、好きな場所を紹介する動画を作成したことです。写真だけでなく動画を使う事で分かりやすいと思い4つ目は、東京富士語学院の事前調べをしたことです。倉八先生の授業の中で東京富士語学院の授業の様子や課外活動をよく見ていました。その授業の回を振り返り、先生のブログの中から「どのような雰囲気で、どのような授業なのか」を調べました。そこには、楽しそうな学生の姿があり、「この場で実習するのか」とイメージすることができました。イメージをすることで、当日の緊張感を抑えることができたのでいい方法でした。

 

  • 対話実習中の実施と感想

対話実習中の実施では、自分が思っていたよりもフレンドリーな学習者の方が多かったので楽しく実習できました。最初のグループでは、日本語があまり得意ではない学習者の方がいたので、ジェスチャーや画像を使いながら対話に臨みました。しかし、時々会話が弾まず止まってしまうこともありました。自分が準備してきた資料に興味関心を持ってくれたことが嬉しかったです。そして、「やさしい日本語」を常に意識しました。最後のグループでは、疲れている姿を見て即興でゲームをしようと提案をしました。紹介した「いっせのせ」は難しかった為、じゃんけんをしました。そこで、どう説明すれば理解できたかと反省しました。

対話実習で気づいたことは、自分が伝えることを諦めず、相手をわかろうとする気持ちが大事だということです。海外留学では、相手の言っていることが分からず、何を言えばいいか分からないことがありましたが、あきらめず話し続けることで意思疎通することができました。この留学の経験がここで生かすことができました。

 

 

  • 今後の実習に向けての抱負

今回の実習を通していくつか反省点が見つかりました。この実習から特に、「対話とは何か」改めて考えるきっかけになりました。実際に、母国語を日本語としない方々とお話するのは簡単ではないと感じました。しかし、一生懸命に話す姿勢や質問してくれて有意義な実習にすることができました。グループによって会話の差が出てしまったことは、より質問の精度を上げ自分の経験の話の幅を増やしていく必要があると気づきました。また、世界の文化への知識を深めたいきっかけにもなりました。中国の歴史や文化は大まかにしか知らず、日本とどのような関係性におかれ、現在の中国や人について事前学習しておく必要があると感じました。今後の実習の向け、授業内で倉八先生から教わる事を復習し自分の糧にしていきたいなと思います。また、日常で人と会話する際に対話する姿勢を忘れずに相手とコミュニケーションしていきます。日常で外国の方に接する事は少なくありません。そこで、やさしい日本語を用いながら理解する姿勢と、理解してもらおうという姿勢を隔てながら行動していきたいと思います。やはり、実習をやることで見えてくるものがあり、次の教壇実習では今回の反省点をなくし挑めるようにいこうと思います。今回の実習で、日本語教師の魅力や大変さを知れてとても良い経験になりました。ありがとうございました。

🌹これからも対話について、私自身が深く考え、実践していこうと思います。気づきをくれた、留学生のみなさん、実習生のみなさんにこころから感謝します。