2025年、2016年10月に創立された東京富士語学院は、本学を選んでくださった留学生たち、そして支えてくださった多くのかたがたのおかげで、創立10周年目を迎えることができました。このことを記念して、2018年3月に開校した姉妹校、東京上智国際語学院と、合同入学式を行いました。場所は曳舟文化センターの劇場ホール、東京富士語学院の学生は230名、東京上智国際語学院の出席者は117名、全体で400名近い学生が劇場ホールを埋め尽くしました。10年でこんなに成長したと、感慨深い想いが胸に沸き起こりました。これまで東京富士を巣立っていった学生たちは約2000人、15か国以上に及びます。私は多文化共生の日本語学校を創りたくて、一人ひとりに寄り添った日本語学校にしたくて、これまで、取り組んできました。その取り組みは、自分の信念を形にしていく長い一本道、<日本語教室の小径>でした。

合同入学式では、来賓のみなさまにおことばをいただきました。東京外国語大学の岡田昭人先生は、はなむけに、<上を向いて歩こう♪>を歌ってくださいました。「上を向いて歩こう、涙がこぼれないように、思い出す、春の日、ひとりぽっちの夜♬」 そう、私は、2016年の創設以来、東京富士語学院からの帰り道、いつも、上を向いて歩いていました。そうすれば、東京スカイツリーのライトアップが見えるのです。あのライトアップは、どんな時も、わたしの疲れた<こころ>と<からだ>をいやしてくれていました。

明海大学の西川寛之先生は、「明海大学のそばにはディズニーランドがあります。そして今週の土曜日にはオープンキャンパスがあって、ただで、ごはんが食べられます・・・」 と語りかけてくださって、東京の魅力を伝えてくださいました。

大崎市立おおさき日本語学校の鈴木健司先生は、「おおさき日本語学校の回りは、こめ、こめ、こめ、こめ、こめ、こめ。私も1年前におおさきに来て、まだ何もわかりません。留学生のみなさんと同じ状態です」・・・と学生によく伝わる日本語で語りかけてくださいました。鈴木健司さんと私は7年間、東京で職場を共にしていました。その東京を巣立って、一人で、宮城に日本語教育の道をもとめられたことに、深い感慨を覚えました。認定日本語学校第1号の専任教員として、<多文化共生>と、文型積み立て(詰め込み)ではない<行動中心主義の日本語教育>を、担っていかれることでしょう。

そのあと、学生たちによる、新入生歓迎のスピーチと新入生による感謝のスピーチ。

歓迎のスピーチは2-1クラスの李涛さん。メモももたないで、自律、自立して、すっきりと立った李涛さんは、「・・・・・日本語の学習は単なる言葉の習得ではありません。日本の文化を深く知り、新しい自分を見つける旅でもあります。・・・学び続け、自分の可能性を信じ、追及し続けてください・・・」。途中で、緊張して、頭出しが出せなくなっても、対話の姿勢は崩れることはありませんでした。すばらしい!!!

クリックして李涛さんのスピーチをお聴きください。

李涛さんのスピーチ

感謝のスピーチは1-1の黄玲美さん。笑顔で、語りかける対話の姿勢で、ひとつひとつ丁寧にことばを紡ぎました。「・・・・・・私たちの目標はみんな違うけど、同じ教室でいっしょに勉強し、同じ喜びを分かち合える、これだけで、本当にうれしいことだと思います。私たちの日本語のテキストには、ただの単語や文法だけでなく、勇気や友情、そして未来の希望に向かう情熱がしるされることを願っています。・・・・・」

そう、日本語教師は、<勇気や、友情や、未来の希望に向かう情熱>を、対話をとおして、育んでいく、そんな日本語教師でありたいと、そのために、何をしたらいいか、ほかでもないこの私に何ができるかを考えながら、これからも、歩んでいけることを、こころから念じたのでした。

クリックして黄玲美さんのスピーチをお聴きください。

黄玲美さんのスピーチ

そのあと、新入生の国:中国、ネパール、パキスタン、ミャンマー、スリランカ、ベトナム、ウズベキスタン、そして、新入生がこれからの日々をすごす日本の、それぞれの国歌を、それぞれの国の文字と風景をスクリーンに映し出して、それぞれの国の学生たちが、斉唱しました。

ネパールの文字もミャンマーの文字も、不思議なおまじないのようです。曲も文字も映像も、それぞれの国の文化をつたえてくれる・・・・・ということが、民族衣装に彩られた学生たちのまなざしと喜びの歌声をとおして、確実に、美しく、伝わってきました。<多文化共生>とは、こういうことなんだということが、<こころ>と<からだ>に染み入ってきました。うつくしい!

 

翌日、学生たちに感想を発表してもらいました。2-2の感想は、90分に及びました。それぞれが、それぞれの感想をつたえてくれました。かれ・彼女たちにとって、合同入学式は対話の空間であり、心の襞にまでふれるものであったことが、ほんとうに、うれしかったです。

ミャンマーから来た1-1の学生は、東京富士語学院に通うよろこびを文章につづりました。

「入学式はとっても楽しかったです。ミャンマーの国歌を歌うことをゆるされて、涙が出るほど、うれしかったです。とてもあたたかい学校にかっよっているような感じがしました。せんせいは、きものをきると、とてもうつくしくみえました。・・・・・・がっこうにかようきかいをあたえられたことを、とてもほこりに思います。わたしは、よろこんで、2年間、毎日、かよい、一しょうけんめいべんきょうすることをけついしました」

最後は校歌にしている滝廉太郎作曲『花』をみんなで斉唱しました。

講師の先生がたも『花』が歌えることを知った2-2の学生たちは、「この『花』は日本人ならだれでも知っている歌なのだ!」と、感想を述べていました。日本人と中国人が、いっしょに、<同じ歌を歌う>という体験は、自文化を超えた、<複文化>の体験になりました。

会場の舞台美、儀式の荘厳美、身にまとった民族衣装の伝統美、そして参加者の協働美が、参加者に、着実に、対話の空間をとどけていきました。

あたたかい<合同入学式>を、みんなで、協働して、創り上げられたことに、こころからのよろこびを、感じました。ありがとうございました。

きょうからまた、ともに、歩んでいきましょう。