2023年5月27日(土)10:00-12:00 日本語教育学会春季大会一般公開プログラムは、「境界の外側から見える日本語教育学―異なる専門分野から見えてくるもの」というタイトルで、3名の登壇者をお迎えして、これからの日本語教育が目指すものについて考えました。登壇者は加藤三保子さん『ろう者をめぐる社会的状況から見えてくるもの』、久保昌弘さん『フランスでの経験、食文化と言語から見えてくるもの』、安藤寿康さん『行動遺伝学と進化教育学から日本語教育を考える』、でした。

わたくしは司会として、これからの日本語教育、対話力について深く考える機会を与えらえました。

語学の教育とは「個人的な思いを発言する場である」(安藤氏)、対話力とは、「会話力」+「表現力」+「思考力」+「判断力」である(加藤氏)、語学の教室は「楽しい」「違いが興味深い」ということが全てだと思う(久保氏)など、勇気づけられる発言に感動しました。

そして5月30日(火)は、東京富士語学院は和洋女子大学日本語教員養成課程の7人が今年の教壇実習に向けての『対話実習』でした。

前半は見学実習。前日はみんなの日本語34課の会話を学びました。「わたしがしたとおりに、してください」、クララさんがお茶の先生から茶道について学ぶ会話です。

それを体現しようと、私は、茶道のお茶碗、茶筅、茶杓、お抹茶、お抹茶の道具などを持ち込んで、日本文化を体感する授業を行いました。

学生たちはほんとうに喜んでくれました。

 

その後の60分は対話実習でした。和洋女子大学の学生たちも、3週間にわたって、準備を重ねました。

留学生たちは「日本人と話すのは初めて・・・本当に楽しかった。いつもこんな授業だったらいいのに・・・」

和洋女子大学の学生たちは「10分はあっという間だった・・・はじめて外国人と話した。本当に楽しかった・・・」

と語っていました。

彼女たちの書いたレポートの一部を引きます。

💗見学実習を通して気づいたこと・感じたこと

「一つ目は、授業に対する生徒の姿勢です。一人ひとりが積極的に授業に参加していて、指名されたら大きな声で答えるなど、発言しやすい環境が整っているように感じました。その環境づくりは、日ごろから先生が生徒とどのように接しているかで、大きく変化するものだと思います。先生と生徒の距離が近く信頼関係が築けていれが一人ひとりが真剣に授業に取り組めるのだと思いました。また、生徒同士でも仲が良いなと感じました。多国籍クラスでも、日本語で交流して友だちになるのは素敵なことだと思いました。二つ目は授業で視覚を使って教えていたことです。例えば、実際に窓を開けて校舎の向かいにあるビルを見せて「あのビルは5階建てです」と伝えていました。このように説明することで、授業で使った言葉がより身近な言葉と認識でき、覚えようという意識に持って行く効果があると思いました。

💗「対話実習をした感じたこと」

実際に60分間の実習をしてみて、緊張もあったけど楽しめたし、短いと感じました。学んだことや感じたことの一つ目は、全体的に日本語が上手だと感じました。自己紹介や質問をしたことに対して、一生懸命聞いてくれたり、答えようとしてくれたりする気持ちが伝わってきました。質問を理解して、自分なりに答えてくれることがとても嬉しかったし、私の伝えたいことが伝わってよかったです。一方で、言葉が伝わらなかったときに、「わからない」と言ってくれたり、グループにいる人たちが助けてくれたりしたのでとてもあたたかいと感じました。2つ目は、明るい雰囲気で、笑顔あふれる生徒たちであると感じました。一生懸命、日本語を学ぶ姿でだけではなく、学ぶことや会話することを楽しんでいて、笑顔が多く見られました。そのおかげで緊張もほぐれたし、不安も吹っ飛びました。質問に答えるだけではなく、私に質問もしてくれました。その返答に対して「ありがとう」と言ってくれて嬉しかったです。

💗教壇実習に向けての目標と今後取り組むこと

一つ目は実習をする中で、私は日本のことについてほとんど知らないことに気が付きました。お茶の作法や、日本で有名なものや場所など、聞かれてもすぐに答えられる自信がありません。しかし、11月の実習では、日本の文化や伝統に触れながら授業を出来たらいいなと考えています。日本のことについてより知っておきたいので、本やインターネットで調べたいと思います。2つ目は伝え方の工夫です。生徒一人ひとりが発言しやすくあたたかい環境を作るために、生徒がどんなリアクションをするのかを予想して教案を作成したり、もし、伝わらかなったときに言い換えできる単語を用意したりします。今回の60分間の対話実習のように、沈黙がなく、みんなが参加できる楽しい授業にしたいです。

 

日本語教員養成課程の学生たちは、本物の留学生との対話をとおして、対話力について考えはじめ、具体的な行動に向けて動き始まました。大きく成長したなあと感じます。

悩み、対立し、反駁し、行動する・・・対話的能動性が文化的衝突からくる摩擦・葛藤を創造性に変えるのだということを、今回もまた、実感しています。