今年度も東京富士語学院で和洋女子大学の日本語教員養成課程の対話実習・見学実習・教壇実習をしました。今年度の実習生は6人でした。
実習したクラスは中級後半のクラス。2023年1月生が中心のクラスです。日本語教育の参照枠に基づいて、多文化共生社会構築のための日本語教育に取り組んできました。すなわち、学習者を社会的存在ととらえ、寛容性をもって、他者をリスペクトしながら、表現活動を行う。グループワーク、プレゼンテーション、日本語能力試験のための文型練習。アクティブラーニングを続けてきました。
中級後半での実習なので、CLIL(Content Language Integration Learning)内容言語統合型学習による教壇実習でした。6月にクラスを見学し対話実習をした後、実習生は見学した学習者を対象に、2人がペアになって、CLILによる教壇実習を準備してきました。
私は、『どんな内容がいいか』『どうしたら伝達(モノローグ)ではなく、対話(ダイアローグ)になるのか』という問いを投げかけ続けました。
実習生ははじめのうち、「どうしたら対話的になるのか、ぜんぜんわかりません」といら立ちをみせていました。
わたしは、「みなさんにしかできない授業、みなさんの内面から出る授業をしてください。それが対話的授業です。」と語りかけ続けました。
実習生の授業は、模擬授業を重ねるうちに、「伝達」から「対話」へと変容していきました。「あの学生たちを対象に実習するのだ」という明確な目標が、実習生を行動へと駆り立てていきました。構造化された授業、自律性を支援する授業、あたたかい授業を目標に、実習生は授業を組み立てていきました。
3ペアの内容は、「かるた」「日本のお正月」「旅行を紹介しよう」でした。
クリックして動画をごらんください。
実習生は教壇実習を終えて、省察のレポート(2000字)を書きました。よく省察されている3人の実習生のレポートをそのまま載せたいのですが、長くなるので、一部を引きます。おつきあいください。
💗実習生1 彼女はどの取り組みにも誠実に取り組み、対話力を成長させていきました。決して、でしゃばることなく、自分の信念をもって、対話的能動性を身に付けていきました。
『見学実習・教壇実習を終えて』
🌹教壇実習の準備について 準備状況と協働で準備している間に学んだこと
準備を始めたころは大まかに内容や流れを全員で確認し、あとは個々の作業にうつりました。見学実習でどのような授業を普段学習者が学んでいるのか見させていただきましたが、それでも人に何かを教えるということは初めてだったのでとても大変でした。まら、やさしい日本語を使ってきちんと詳しく明確に話せるかも不安でした。他のメンバーと協働で作ったスライドや資料はうまくまとめられたと思います。お互いわかりやすさ重視で、情報は少ないですが、口頭で伝えられたと思います。少し期限ぎりぎりに用意したものもあったので時間配分に関しては反省しています。改めて、学習者に対して何かを教えるということの難しさを強く感じました。また、急遽もう一つ教壇実習が増え、そちらの準備も行っていましたが、こちらの方もどう用意すれば楽しく学んでもらえるか考えるのが難しかったです。
🌹グループ対話の感想・反省点
たくさん交流できて楽しめたと同時に、学習者の方々から多くのことを学びました。自国のことだったり、日本の生活についてだったり、日本語の難しさだったり、教えてくださりました。充実した時間を過ごせました。時々、どうすれば日本語でわかりやすく伝えられるか不安になって、少しの時間、相槌などのみで、話せなくなってしまったのが反省点です。もっと自然に優しい日本語を話せるようになりたいと感じました。最後のほうはなんとか会話が途切れずに話せたので、機会が今度あるなら、最初からしっかりと話せるようにしたいと思います。
🌹この経験を今後の人生に具体的にどう生かしていくか。
将来は日本語教員の道にはすすまないと思います。自分のやりたいことがあるのでそちらの道に進みますが、外国の方と接する業界なので、この実習や多文化共生などを真南画この授業の内容を活かすことはできると思います。ですが、ボランティアとして日本語を学びに日本に来ている学習者の手助けはできたらと考えています。また、自分で学習者をサポートすることができるなんかしらのイベントなどを計画したいとも考えています。多文化共生について多くのことを学んだので、自分の学んだ知識を他の人に広め、より外国の方々が暮らしやすい環境を作れたら良いと思っています。また、将来のために私も英語や中国語を学んでいるので、一生懸命な彼らのように、勉強を頑張ろうと思います。
💗実習生2
取り組んだペアとの関係性がうまくいかず、半年間悩み続けました。その体験と向き合い、その体験を『経験』に高めて、省察のレポートを書きました。
『見学実習・教壇実習を終えて』
私が教壇実習の準備を行う上で学んだことは協調性がいかに大切なものであるかである。そして、準備期間で私自身が特に強く感じたことは、授業は一人ではなりたたないということである。教壇実習までの半年間はあっという間であった。当時を改めて振り返ってみると私は常に焦りと不安を感じていた。他のグループは順調に準備が進む中、私のグループは夏休み前に一度も発表が出来ずとても心配だった。11月になって状況が変わりメンバーが変わってからは、短期間にもかかわらず実習に向けた準備が進み、無事に本番をむかえることができた。準備はもちろん時間をかけたほうがいいと思うが、どんなに時間をかけて準備をしても協調性がなければ良いものはできないと感じた。また準備期間を通して、普段の生活の中で気づけなかったことに気づくことができた。(中略)
しかし授業自体は目的をもってしっかりできたと感じた。発表の際にそれぞれのチームがとても詳しく観光地について調べてくださり、自分たちの言葉でしっかり伝えられていたところがとても印象的であり、私はとても感動した。そして、何よりも感じたことは授業を行うことはとてもたいへんであるということだ。教案を作成して試行錯誤をしながら授業内容を考えることはとても難しかった。教壇実習を通して普段気づけなかったことを新たに見つける機会だと思い、とてもやりがいを感じた。そして一緒に授業を作ってくれた松本さんにはたくさん迷惑をかけてしまい、とても反省している。今一番思うことは、松本さんと一緒にペアになって教壇実習をすることができて、本当に良かったということだ。松本さんがいなければ私自身どこかで諦めてしまっていたと思う。ほんとうにありがとう。そして準備期間を通して日本語教員養成課程を受講しているみなさんとも、かなり絆が深まったと感じた。模擬授業の際には、沢山のアドバイスをしていただき、ほんとうにありがとうございました。このメンバーで日本語教育実習を履修できてほんとうによかったと思う。そしてたくさん迷惑をかけてしまった倉八先生に感謝の気持ちでいっぱいだ。
教壇実習を通して本当にたくさんのことを学んだ。特に私自身が教える立場になって授業を行うという体験は、私の人生においてとても貴重な体験であった。私は自分の生まれ育った市で公務員になるという目標をもって日々勉強しているが、実習の準備期間を含め、ひとつのことに向かって協力をして取り組むということは市役所職員の仕事と重なる部分がある。公務員は地域の人々に寄り添い良い街にしていくために様々なことをする仕事であり、課によって全く異なる職業内容である。そして数年おきに異なる課へ移動するという点において、常に協力しあいながら仕事をしていかなければならない。今回の教壇実習を通して学んだ協調性を、社会人になった時に活かすことができるようにしていきたい。
💗実習生3 実習生3は英語の中学校・高校の教育実習にも取り組んだ学生です
🌹教壇実習
日本語教育実習の授業の中で、一番大変であり、一番大切だと感じたことは「みんなで授業を作る」ということです。倉八先生は授業を行う上で、対話的な授業・あたたかい環境づくりをこころがけ、コミュニケーションを大切にしていました。これらを踏まえて、授業準備を行う際に、相手に投げかける質問を考え、それに対する回答を予想し、どんな反応にも対応できるように準備しました。実際に授業をした際に、焦ることなく、対応できたのでよかったです。さらに、そこから発展させ、教えるだけではなく、共に学んでいくこと・伝え合うことができました。しかし、これは数人の留学生としかコミュニケーションをとることができず、クラス全体で授業を作ることができなかったと反省しています。
一度しか、教壇実習はできなかったけど、とてもよい経験になりました。留学生の笑顔や言葉から楽しさが伝わってきて、大変だったけど、一生懸命準備をしてよかったと思います。全体をとおして、「みんなで授業を作る」ことを体験できて、課題もありますが、自分の最大限の力を発揮することができてよかったです。機会をくださり、ありがとうございました。
🌹この経験を今後の人生に具体的にどう生かしていくか
授業に積極的に参加し、問いかけに答え、笑顔でコミュニケーションをとってくれた留学生と共に授業を作ることができて、とてもうれしく思います。私自身も緊張していましたが、笑顔で楽しく授業を行うことができました。この見学実習や教壇実習でクラスがあたたかい環境であると感じました。それは普段から倉八先生があたたかい環境を意識し、一人ひとりの個性を理解し、対話的な授業をこころがけているからだと思います。私も今まで中学校の教育実習・日本語学校の教育実習で、授業を通して人と関わることの楽しさや、共に学んでいくことの楽しさを体験することができ、いつか先生という仕事に就きたいと改めて思いました。今回の経験を忘れず、大切にしたいと思います。
実習生3は航空会社への就職がきまり、北海道に行くことになっています。
💗以上のように、実習生はそれぞれの省察を通して、実習へ取り組んだこの1年間が深い学びと成長の時期であったことを、自らのことばで綴りました。
私は、<多文化共生>について何も知らなかった大学生が、この2年間の日本語教員養成課程の学びを通して、<多文化共生>を生きようとする心性を身に付けていったことに、今回もまた深いよろこびを感じることができました。実習生のみなさん、本当にありがとう。みなさんの社会人としての成長を念じています。💗
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